お役立ち情報

介護施設に必要なものを届ける「マッチング」営業

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

営業で聞き役に回るトーク例とは

  • 介護施設における稼働率向上実務のポイントシリーズ第 40 回。
  • 「聞く」ことにより相手の気づきを引き出すことの効果を理解したところで、その具体的な実践方法を考えていく。

介護事業所における飛び込み営業の悩みとは

前回、営業トークが、望まないコマーシャルを押し付けられるような迷惑行為にならないためには、営業を「する側」が一方的に話し続けるのではなく、営業を「受ける側」の話を聞くことに徹することが重要と伝えた。つまり、営業を受ける側が主体的に話をするようなコミュニケーションの場を作れば、迷惑で忙しい時間を奪われる場にならない、ということだ。そのような場の中で耳にする情報は、奪われた時間の中で押し付けられた情報よりも聞くに値するものになりやすい。だが、そのような場を営業訪問の中で作ることは可能なのだろうか。
このような場をイメージしやすくするために、簡単な営業担当者(営業)と居宅介護支援事業所ケアマネジャー(CM)との会話のイメージを以下に示す。

営業「こんにちは、また来ました。あれからお困りごとはありませんか?」
CM「こんにちは。困りごとね…、デイサービスに関係する件ならあるけど」
営業「お困りごとに中身は関係ありませんよ、ぜひ聞かせてください」
CM「実は今週になって、新しいケースを受けることになったんだけど、ピック病の症状が
あるということで受け入れ先がいまだに見つかっていないのよね」
営業「ええ、それは大変だ。その方、具体的にどんな症状があるのですか?」
CM「それが、結構大変で、●●のようなことが頻繁に起きていて…」
営業「確かに、それは厳しいですね。けど、それでしたら解決する方法にいくつか心当たり
があるんですけど、ご興味ありますか」
CM「そうなんですか? それならぜひ聞かせてください」

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トーク例から得られる気づきとは

いかがだっただろうか。記事のスペースの関係で非常に単純化された会話で、現実的にはこのように思い通りに進んでいくとは限らないものだが、意図はある程度伝わったのではないだろうか。まず、聞きに徹するという会話が、構えて考えてしまうほどに難しいものではないと感じられたのではないだろうか。

ここでのポイントは、基本的に営業担当者は質問から会話に入っていることにあるとお気づきだろう。そのうえで、相手の話を聞き、内容に興味を持ったうえで、その話を詳しく知りたいからさらにシンプルな質問をする。その繰り返しの中から解決の糸口が見つかったのであれば、はじめてそれを提案する形にしている。最終的には提案という形で終わっているが、この流れの中であれば先方も聞く耳を持ってもらえている可能性は高いはずだ。
つまり、ここで考えなければならないことは、営業活動とは押し売りの仕事ではなく、必要としている人に必要なものを届ける「マッチング」である、ということだ。営業とは、必要のない方に必要だと無理に思い込ませて必要のないものを押し付けるのではなく、今必要なものは何かを思い出していただき、それは何かを教えていただき、そこに当てはまるものを提供することだということを再認識していかなければならない。それができれば、おのずと営業活動で必要なことは説得力ではなく、情報収集のための「聞き」であることに気づくだろう。

もちろん、そうすると、極論で言えばひとつのことしかできない介護サービスにとって、自分たちのできないことをニーズとして上げられたら答えに窮してしまうと考えるかも知れないが、単純にそうなればそれができる他施設を紹介すればいいだけのことである。
この辺の詳しいロジックがどうなっているのか、ということと、それでも最終的には自分たちのプラスになる取り組みであることを確認することについては、次回お伝えしていく。

レポートの執筆者

沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント

株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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